t-hom’s diary

主にVBAネタを扱っているブログ…とも言えなくなってきたこの頃。

基板エッチングのテストとして銅線を使ったイオン化と析出(廃液処理)の実験

今回は実際の基盤エッチングを行う前に排水処理についてテストしておく。
基板のエッチングでは銅イオンの溶液が発生するが、2つの問題がある。

  1. 銅イオンは有害なので、下水に流すと公害の原因になる。(銅イオンそのものは人体には無害とする説が多数検索されたため混乱中。不明へ変更。ただし排出基準は存在するので守らなければならない。淡水生物にとっては毒になるらしい。)
    基準値を超える銅を排水することは犯罪行為。
  2. 銅を溶かすために使用した溶液を流すと酸によって配管が溶ける

よって以下の方法で銅を取り除き、pHを中性に戻してから排水する。

  1. アルミニウムを溶かすことで銅を個体に戻し、濾過して取り除く。
    アルミのほうがイオン化しやすいため、銅イオンが銅(酸化銅)にもどるという原理。
    銅の析出という。アルミはイオン化するが、危険性が低いため排水基準はない。
    (飲めるわけではない。下水に基準はないけど、上水の基準は存在する。)
  2. 重曹を混ぜて中和する。

理屈は分かったんだけど、やったことがないので万が一うまくいかないことがあると困ってしまう。
そこで実際のエッチングを行う前にまずは少量の銅を溶かしたテスト廃液を作成してそれを処理してみるというのが今回の記事。

エッチング液の準備からエッチングまで

今回は少量のエッチング液を作る為オキシドール 5ml、クエン酸 1.5g、塩 0.3g を準備する。
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この配合は以下のサイトに記載された100ml:30g:5gの比を参考にしたもの。
pub.fabcloud.io

まずは試験管で混ぜてみたもののクエン酸と塩は沈殿してぜんぜん溶けないので計量後はビーカーに移してかくはんしてから試験管に戻した。
以下、完成したエッチング液と投入予定の銅線。
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投入直後に泡立ってくる。
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我々素人は泡=空気だから危険はないと思いがちなので注意。
泡とは水中に気体が発生したことを示しているだけであって、それが何の気体なのかはケースバイケース。
化学反応で泡が出てきたら、基本的には換気を良くして直接吸わないほうが無難。

反応はけっこうマイルドでそれほど発熱することもないが、しばらく様子を見ているとうっすらと着色してくる。
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ここからが長い。というかこれ結構時間かかるので、そのまま放置してしまった。
そして4時間くらい経ってから見てみると完全に銅がイオン化し、綺麗な青になっている。
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実際に何時間で溶けたのかは不明。

廃液処理

銅イオンが解けたエッチング液に、まずは少量のアルミニウムを投入する。危険な作業なので必ず少量で様子見。今回の廃液の量に対しては、厚み11マイクロメートルのアルミホイルを2cm×5cmくらいにちぎって小さく畳み込んだものを使用した。

銅の腐食と違って反応が早く、すぐに大量の泡が出てくる。
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熱もけっこう出てくる。以下はアルミ3投目くらいの少し反応がおさまりつつあるときに計った温度なので、1投目はもっと高温だったと思われる。写真を取り損ねたけど、試験管が湯気で曇っていた。
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ビーカーに冷たい水を張っておき、あまり温度上昇が激しいようなら試験管をつけて冷やす。

しばらくするとコバルト色になってくる。これは析出した酸化銅が泥みたいに舞い上がって水を汚してる為と思われる。
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ここまでくれば反応速度がかなり遅くなってくるので、少し多めアルミを入れて接触面積を増やして析出の速度を稼ぐ。

最終的にはヘドロみたいな色になり、泡もほとんど立たなくなる。
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これを濾過するとフィルターに黒い汚れがつく。
沈殿物が試験管に張り付くので洗浄ボトルで水を注ぎ入れて浮かし、そのまま一緒に漏斗にうつして濾過する。試験管自体、洗浄ボトルの水で洗浄してその廃液もやはり一緒に濾過。
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あんなに濁っていたのにフラスコの底にたまる濾過済の液は無色透明。
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念のため再度アルミを投入して全く反応が無いことを確かめた。
ここで少しでも泡が出るようなら析出と濾過を繰り返すことになる。

使い終わった酸化銅まみれのろ紙は紙皿にでもうつして自然乾燥させて、そのあと燃えないゴミで廃棄。

ちなみにこの透明の液は酸性なのでこのまま捨てると配管が溶ける恐れが残っている。実際にpH試験してみた。
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重曹をまぜるとこのとおり激しく発泡する。
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pHが安定したら大き目のビーカーに移し、水道水で10分の1くらいに希釈して排水した。
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実際のエッチングではもう少し廃液が増えるだろうし、最後の希釈用に大き目のポリバケツが必要になるかな。

とりあえず今回の実験は成功に終わった。
結局、念のためにと用意した道具のほとんどをフル活用することになったので入念に準備しておいてよかった。

以上

11/1 追記

ろ紙が乾燥したので析出した銅をマイクロスコープで撮ってみた。まぁただの錆屑なので特別面白いものでもないけど。
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少しキラっと光るものが混ざっているので、単体の銅ってよりは中にアルミ屑をが収まってて、取り囲むようにびっしりと酸化銅が生えてる感じかな。
体積は入れた銅線よりも大きい気がするので多分そう。

ろ紙に貼り付いたズタボロのアルミと酸化銅。
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